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人口減少の中でも輝くひとたちにあふれるまちを夢見て
〜中間支援機能を担うことで
地域とひとをつないで明るい未来を描く

富山県朝日町

今回は善田 洋一郎さんに
お話を伺いました
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全国的に空き家問題や人口減少は深刻であり、私の住む地域も例外ではありません。それらへの対策は地域によってさまざまあり、各地域の事例を学ぶことは今後必要不可欠なことではないでしょうか。


本記事では、自治体の外に出て移住定住の促進、関係人口の創出などを行うため、富山県朝日町で中間支援組織を立ち上げた善田 洋一郎(NPO法人 コクリエ 代表理事)さんと、弊社インターンとのトークをお届け。


組織立ち上げの経緯や活動内容は一体どのようなものなのでしょうか?善田さんの空き家に関わるプレーヤーとしての姿に迫ります。

空き物件へのアプローチ力向上のために、空き家バンクの機能を行政の外に出して利用者の利益を追求


平野(モデレーター:以下省略):現在は主にどのような活動を行なっていらっしゃいますか?


善田さん(以下、敬称略):今は役場の職員とNPO法人コクリエ(以下、コクリエ)の代表理事との掛け持ち状態です。


写真左>善田 洋一郎(ぜんだ よういちろう)さん:NPO法人コクリエ 代表理事/長野県野沢温泉村出身。朝日町役場にて移住相談員として空き家バンクのマッチングなどを行う。2022年4月よりNPO法人コクリエの代表理事として役場が担っていた空き家バンクの機能を引き継ぐ。


善田:2022年3月末までは、役場職員として移住相談員の肩書きで、空き家と移住相談の窓口であるこすぎ家の業務をメインで行いますが、4月からはコクリエだけで活動をしていきます。


平野:4月からは空き家バンクの機能を役場の外に出し、コクリエで中間支援機能を担っていくとのことですが、そうしたいと思った理由はありますか?


写真右>平野 彩音(ひらの あやね):大正大学 地域創生学部3年 町おこしロケーションタイムス インターン/三重県松阪市飯高町出身。三重県立飯南高等学校在学中に空き家片付けプロジェクトなどに取り組み、卒業後も地域と関わりを続けて空き家問題などの地域課題に取り組んでおり、その活動が注目され、「地域人(地域構想研究所 地域人)71号」で取り上げられる。最近は地域の特産品に関わることにも携わりながらweb「空き家活用特集」での情報発信も行う。


善田:空き家の所有者さんは、管理や活用方法、壊す場合の金額などを知りたいんですね。それを行政に相談に来られても、特定の事業者に斡旋するわけにもいきませんし、なかなか具体的な解決策をご提案できず、結局ご自身で調べてもらう必要があるんです。


また、空き家を探しているユーザーさんにしても、トータルでいくら掛かるか知りたいと思うのですが、そこまでアプローチするとどうしても特定の事業者に見てもらう必要があるんです。ですが行政が与えられるのは「この物件をこれぐらいの金額で売りたい所有者さんがいる」という情報だけなんです。


行政側の事情によって教えられない、常にブロックが掛かっている状態をなんとか突破できないかと考えた時に、空き家バンクの機能を外に出すほうが良いのでは?と考えました。そうすることで行政がやるよりは民間主導でやることが利用者の利益になるはずなんです。


若い地域の共感者とともにNPO法人を立ち上げたきっかけが、地域と域外の間に入り中間支援機能を担うこと


平野:空き家バンクの機能を役場の外に出すことになった経緯をお伺いできますか?


善田:元々は、もっとまちのために地域の間に入り中と外をつなぐような組織を立ち上げたいという思いで「役場を辞めます」と直属の上司に伝えたことが始まりでした。


辞めた後に何をするかは具体的に決めていなかったのですが、まちのために組織を立ち上げるなら、そのまま移住と空き家の窓口業務もやらないかと役場から声をかけてもらい、結果的に空き家バンクの仕事を私が外に持って出ることになったんです。


僕にはそれを決定する権限はありませんが、内心ではそうしたいと思っていたので、とても嬉しかったです。


平野:コクリエはどのような方々で構成されているんですか?


善田:メンバーとしては元々仲の良い人たちで、朝日町が好きで移住してきた方々や商工会に所属して町のためにいろいろな活動をしている方々で、移住者が半分、残りの半分が地元の商工会の青年部に所属している若い経営者で、大工、一級建築士、土地家屋調査士、あとは行政職員や林業マン、畳職人もいます。


僕が役場の外に出てNPO法人を立ち上げ、空き家と移住の事業をやっていく話をしている時に、何かしたい想いは皆が共通して持っていたようで「いいね、応援するよ」と言ってくれた仲間たちです。


これからの僕の目標は、僕のポジションを若い方に譲ることです。現在はまだ若いスタッフはいませんが、できるだけ早くコクリエの理念に共感してくれる方々に門を叩いてもらえるよう、しっかりと活動していきます。



平等性や公平性、そして透明性を大事に利用者と寄り添い、清潔感と笑顔を大切に利用者目線になって考えること


平野:地域の人と関係性を築く上で大切にしていることは何ですか?


善田:空き家や移住支援業務を行う上で地域との関係性は重要で、そこを初めから大事にして続けてきました。


僕が出来ることと言えば、清潔感を大事に笑顔をもって利用者の方から心地良いと思ってもらう場づくりや正直に分からないことは率直に申し上げるなど、基本的なことを重視していました。


結論としては「素人感」が大事だと思います。利用者と同じ目線に立って、どうしましょうと一緒に考えるスタンスが、結果としては非常に良かったと思っています。


平野:今後地域の人と関係性を築いていく中で課題があれば教えて下さい。


善田:地域の事業者さんとどう連携していくかが課題だと思っています。NPO法人ですが、行政の仕事として受託しているので、そこで特定の事業者と組むのは何らかの理由が必要なんです。どうしても行政の仕事の場合、平等性や公平性、そして透明性が付いて回るので、その辺をどうクリアするかですね。


また、移住希望者の方と町内の方が事前に顔を合わせたりしながらマッチングを深めていくのが理想だと思うのですが、移住者がトラブルを起こした場合、受け入れる判断をした町内会の責任になってしまう可能性もあり、移住者が空き家に住むかどうかを町内会に判断してもらうことが難しく、地域の方とまだまだ連携できていないことも課題だと思っています。


僕も移住希望者も地域の方々も飲み友達のような感覚で「こんな人がいるんですがどうですか」「私たち、この家に住みたいんです」「町内会の担い手が不足してて・・・」などと、お互い本音を語り合える場づくりが大事なのではないかと考えています。


こすぎ家では移住者や関係人口とまちの人が集まって食事会が催されたことも


平野:善田さんが空き家の活動に必要だと思っている資格などについてお伺いできますか?


善田:特定の資格は特に必要ないと思いますが、不動産業者必須の資格として宅地建物取引士があるほうが安心です。


あとは民間の資格ですが、空き家相談士もあり、そういった専門知識がある方がお客様にアドバイスできることが圧倒的に増えます。ただ、専門知識を振りかざし専門家として利用者さんと向き合うよりも、一緒に悩み考えて寄り添うほうが相手に信用していただきやすいですよね。


舟川新地区で行われている春の四重奏のかがり火


家財を残して空き家を売買することで、買い手にニーズがあるか判断を委ねられるだけでなく物件供給能力の向上に


平野:コロナ禍で感じた物件に対する価値観の変化はありましたか?


善田:社会情勢が変化してから、空き家の所有者さんと物件に対する想いが離れてしまった印象を受けます。


朝日町の場合、空き家の所有者さんはほとんど町外の遠方にいらっしゃり、物件管理のために年に1〜2回帰省されていたんですが、それがなかなか叶わなくなり遠い存在になってしまった気がします。その結果、空き家バンクへの登録数も減少しました。


空き家バンクの登録物件自体が新陳代謝が鈍って新しい物件も出ないので、結果として新しい利用者も来ない悪循環になっています。


空き家に関しては供給がないと何も始まらないので、発掘活動にもう少し力を入れていきたいです。



平野:朝日町では、家財が残っていても空き家バンクに登録することはありますか?


善田:はい。売れるかどうか分からない時点で家財処分に50〜60万円もかけてしまうと、物件所有者に対して不利益になる可能性があります。まずは物件自体にニーズがあるかどうかを判断するために、家財が残った状態でも空き家バンクに載せることが多いです。


平野:入居者の方が、補助金などを使いながら家財を片付けていく形なのでしょうか?


善田:入居希望の方と相談して、家財をどうするか決めることが多いです。所有者負担で処分する場合でも、そのまま使いたいものがあれば残してもらったり、家財処分にかかる金額を物件価格から引いて入居者が自分で処分したり。ケースバイケースですね。


地域住民協力のもとで笹川地区にて物件を視察する様子


空き家で“遊ぶ”ことで暮らしを楽しみ空き家活用のエコシステムを見い出して課題解決につなげていく


平野:今後、空き物件で挑戦したいことはありますか?


善田:自分たちが楽しめる拠点を作りたいと思っていて、コクリエで物件を一つ所有したいと考えています。


周りに比較的家が少ない山際の物件で、キャンプをしたり裏山で遊んだりと自分たちが楽しみながら空き家で遊ぶことをまずやろうと話しています。


理想はそこに移住希望者や興味を持った人たちが集まってきて、その中からそこに住みたい人が現れたら譲渡するような形を実現していきたいです。


平野:それはとても素敵ですね。そして、空き物件の所有者さんが抱えている課題解決のために中間支援機能を担っていくのがコクリエの役割だと思います。


最後に、朝日町に興味を持っている方へメッセージをお願いします。



善田:朝日町はこれからも面白いことが起こっていくまちで、いま朝日町に関わりだすと非常に楽しい現場を目撃できるチャンスだと思います。


また、朝日町にはないスキルや人脈を持った人たちが関わることによって化学変化が起こり、新たなコトが創発されて地域でできることも広がります


都市部では当たり前の肩書きを持った人がここに来ることで、とてもありがたい存在になれますし、その人もやりがいのある幸せな暮らしを送ることができると思います。


僕としてはもっとたくさんの方たちを朝日町に呼び、多様な考え方や生き方をしている大人たちと朝日町の子どもたちが自然に接する機会を、朝日町の日常にどんどん落とし込んでいこうと思っています。




結び-Ending-

コクリエが、中間支援機能を担っていくことで地域と外のつながりやネットワークが形成されることを願っています。


空き家バンクの機能を行政の外に出すことは、他の地域でも検討されていることであり、本記事がそんな地域の方々のお役に立てれば幸いです。


これからが面白くなっていくまち、朝日町。善田さんの今後のご活躍にも注目です。

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■企画・著作
町おこしロケーションタイムス編集部

【取材データ】
2022.03.23 オンライン取材
【監修・取材協力】
・NPO法人 コクリエ
・善田 洋一郎様
【グラフィックレコーディング】
中村 沙絵

取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。

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