現地に行けなくても、地域を応援することはできるカタチがある
2020年から続くコロナ禍。
何もできないと思いがちですが、このようなご時世でも自分らしく地域活動をする一人の学生がいます。
今回、三陸地方は岩手県宮古市日出島地区でホタテ漁師をはじめとして活躍する、株式会社 隆勝丸(りゅうしょうまる)にて、 NPO 法人 ETIC.の「地域ベンチャー留学 *1」を活用し、地域で挑戦し続ける東洋大学 3 年の渡邉 蛍都(わたなべけいと) さんに弊社代表、中野がインタビューいたしました。
*1 地域ベンチャー留学
日本全国の挑戦を続ける地域企業やNPOの経営者・リーダーの右腕となり、新規事業や商品開発などにチャレンジする実践型インターンシップ・プログラム。地域と関わりながら企業・経営者・地域が抱える課題の解決を目指す。(https://cvr.etic.or.jp/ より引用)
今回は渡邉 蛍都さんに
お話を伺いました
渡邉 蛍都(わたなべ けいと)さん:東洋大学 3 年生(2021年3月現在)。隆勝丸アンバサダー*2/名前の「蛍都」は「蛍」のように小さくても自分で光を放ち、その光で仲間と一緒に「都」 を作りたいという願いが込められている。大学では情報を収集・デザインし、発信力を身に着けてイ ベントを開催することで地域の情報発信に繋げる取り組みをしている。学ボラに所属し、地域活性化につながるイベントを企画・運営したいと意気込む。
*2 隆勝丸アンバサダー
「隆勝丸ホタテ」をより多くの人に食べてもらい次の事業へ展開していくための、漁師による漁師のファンクラブ
参考記事
高校生のときに気づいた地域の魅力を発信することへの気持ち
中野:地域ベンチャー留学は、コロナ禍ではオンラインで進めているということで難しいことや苦労もあったと聞きました。
中野 隆行(なかの たかゆき):町おこしロケーションタイムス ファウンダー/愛媛県松山市出身。地域での写真活動を機に出会った地域の人たちの素晴らしい価値観に触れたことがきっかけで、自身の好きな旅をテーマに、全国の地域で暮らす人たちの何気ない姿を価値として発信する地域メディア「町おこしロケーションタイムス」を立ち上げる。
蛍都さん(以下、敬称略):オンライン上では、自然と情報を手に入れることができず、自分で積極的に情報を手に入れなければなりませんでした。そのため自分で考え、自主的に経営者の方や「地域コーディネーター *3」の方に提案するように心がけました。
*3 地域コーディネーター
異なる価値観を持った人同士の理解を深め双方に価値ある機会を提供し、地域で若者と地域の資源をつなぎ、新しい価値を生み出していく中間支援者
参考記事
http://yokohama.etic.or.jp/archives/1192
中野:蛍都さんは東日本大震災をきっかけに三陸地域に焦点をおいて活動しているようですが、その中でも宮古地域での活動が多いのでしょうか。
蛍都:そうですね、まず最初、高校生の時に東北ボランティアに参加しました。その経験からもっと東北の魅力を発信したい!という気持ちが湧いて東北応援プロジェクトを立ち上げ、東北地方全体のことをみるようになりました。
その後、復興庁主催の復興創生インターン*4で宮古地域だけに関わるようになり、三陸・宮古の漁業、特に株式会社 隆勝丸の代表取締役、平子 昌彦(タイコ マサヒコ)さんに心惹かれました。
*4 復興創生インターン
被災地の企業や団体が抱えている経営課題に対し、約1~2ヵ月間、経営者と協働して『課題解決』に取り組む実践型インターンシッププログラム
参考記事
https://jinzai.reconstruction.go.jp/intern/startup/
中野:平子さんは若手の漁師さんですが、関わってくれている方への感謝、蛍都さんの活動にも応援もしてくれますよね。蛍都さん自身は宮古を訪れたことはあるのですか?
蛍都:実は宮古にはまだ一度も。行きたいです!!!
中野:まだ訪れたことがないんですね。ここまでの話を聞いていると既に行ったことがあるかのような印象を受けました!
蛍都さんは隆勝丸アンバサダーということで毎月ホタテが自宅に届いているのですか?
蛍都:毎月届いているわけではないですが、お正月に平子社長から送って頂き、家族で一緒においしく頂きました。
中野:私も隆勝丸さんには、去年に蛍都さんたちが主催して行った復興創生インターンで行ったオンラインイベントに参加して以降、時々ホタテを注文させていただいています。やっぱり新鮮なので刺身が良いですよね!
教えてもらった繊維に沿って切るやり方で食べてみたら、甘味があってとても美味しかったです。他の地域とは違うホタテの風味を感じることができました。
漁師さんは仕事がハードな分、地域のためにお金を稼いで、地域に貢献していきたいという思いが強く感じられるので、もっと応援していきたいなと思うのですが、蛍都さん何か伝えたいことはありますか。
蛍都:隆勝丸アンバサダーというのが、平子社長と共に隆勝丸ホタテをより多くの人に食べてもらいたいという願いから漁師による漁師のためのアンバサダーという仕組みを現在作り上げています。
平子 昌彦(たいこ まさひこ)さん:株式会社 隆勝丸 代表取締役/岩手県盛岡市出身。高校を卒業後、地元の製造業で6年間勤務した後、漁師を目指して宮古市へ移住。25歳の時にホタテ養殖業を開始。2018年に株式会社 隆勝丸として法人化。
蛍都:私は平子社長の東北、そして海の良さを伝えたいという熱い思い、漁師の仕事に対する姿勢にとても惹かれました。
平子社長は将来、子供から大人まで楽しめるマリンパークを作り、全国に海産物の美味しさや、海の楽しさを伝えていきたいという夢があります。私も平子社長の右腕になって、東北や海の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。
また私自身の将来実現したいことは、子供たちや学生に喜びや感動を届けられるようなサービスの企画・運営することです。
現在コロナ禍で遠く感じてしまっている非日常体験を提供することで喜びや感動、挑戦することの楽しさを体験してもらいたいと思っています。
隆勝丸では以前から釣り船やマリンレジャーを体験することができますが、私は漁師と交流できるイベントを新たに企画し、本やネットでは学べないことを実体験で得ることで好奇心を広げていきたいと思っています。
相手目線になって伝えていくことで地域の魅力を感じて欲しい
中野:そのイベントは情報発信の一つのコンテンツでもあると思いますが、蛍都さんは情報発信に力を入れているのでしょうか。
蛍都:そうですね。記事を執筆したり、SNS投稿はあまり得意では無いのですが、ラジオやインターネット放送に関わらせてもらう中で伝えていくことができるのは自分の強みだと思います。
中野:なるほど。自分の言葉で相手目線になって伝えていくことってなかなか難しいことですがそこに挑戦していくのは素晴らしいですね!今話題のClubhouse *4でも発信できそうですね!
*4 Clubhouse(クラブハウス)
アメリカ合衆国の企業であるアルファ・エクスプロレーションが開発している招待制の音声SNSアプリケーション(wikipediaより)
蛍都:Clubhouse、やってみたいです!
中野:先ほど将来のお話もありましたが、蛍都さんは岩手に移住して働くのでは?と思ったのですがその点はいかがですか?
蛍都:私は現地で活動するより、今までのこの経験を通じて外から魅力発信に力を入れていきたいと考えています。それもまたボランティア活動の一つのカタチだと思っています。
中野:地域の関係人口として東京から情報発信をしていくと。私も蛍都さんと同じように違う場所から地域を応援する形で活動していますが、それもまた面白いですよね。
取材を受けてくれる方もすごく喜んでくださる。だからこそ発信する側は地域の方々の本音をしっかり届けなければならない。自分中心の発信にせず、相手の思いを大事にすることが私たちの使命だと思います。
蛍都:そうですね。自分がどのような場所で就職するのか、まだ分かりませんが、今後も地域の情報・魅力発信に携わっていきたいです!
オンラインを活かした地域活動でワクワク感を醸成する
中野:コロナ禍で本当に大変な学生生活を過ごされていると思いますが、心境としてはどうですか。
蛍都:確かに、今まで当たり前だった生活が変わってしまったことで大変なこともありましたが、私は「コロナ禍でも自分ができることはたくさんある!」と前向きな気持ちで過ごしてきました。
復興創生インターンで行ったオンラインイベントでは、オンライン上でも非日常を感じられると気づきました。
オンラインだからこそ日本各地、離れた場所から多くの方に参加して頂き同じ時間を共有することができました。この経験から地域イベントの可能性が広がったと分かりました。
中野:そうですよね。もちろんリアルでイベントに参加することがベストだと思いますが、オンラインでもできることがたくさんある。これはコロナ渦がなければ気づかなかったことだったと思います。
蛍都:コロナ禍のおかげとは言い難いですが、それがあったからこそ出会えた方もたくさんいらっしゃいます。
中野:今後オンラインを活かしてやってみたいことありますか。
蛍都:コロナ禍でオンラインを活用することに強くなったので今後さらにオンラインイベントを企画していきたいと思っています。
中野:地域のために何かをすることって楽しいという気持ちが一番大事だと思います。
ワクワクするコンテンツを地域に仕掛け、結果的にそれが地域活性化につながる。目標・目的はもちろん必要ですが、まずは地域の方と一緒に楽しむ気持ちは忘れてはいけないですよね。
蛍都:そうですね!自分が楽しいと思った企画をやっていきたいですし、それを皆さんに届けたいです!
地域で挑戦することの楽しさを同じ志を持つ人たちと共有する
中野:これからの活躍する後輩達に何か伝えたいことはありますか。
蛍都:次世代を担う後輩達には挑戦する楽しさを伝えていきたいです。私が行っている地域ベンチャー留学の醍醐味は同じ志を持っている仲間と出会い、信頼関係を結び、将来に続く関係を築けることだと感じます。
だからこそ、一人でも多くの学生に挑戦することのやりがいを伝えられるように頑張りたいです!
中野:なるほど、蛍都さんの子どもの頃の写真も拝見しましたが、写真から感じる輝かしさと名前の由来にも通じるものがあって素敵な取り組みですよね!
蛍都:そうなんです。名前の由来が、ホタルのように小さくても自ら光を放って、その光に仲間が集い、都を創って欲しいという願いが込められている部分があって、「小さくても想いを持ち続けているんだよ」っていうことを、あの写真で伝えられればとも思っているんです。
中野:そうですか。想いは小さくても同じ志を持つ人同士をつないで大きな光となって地域に化学変化を起こしていけたらいいですね!今後も地域を盛り上げていく活動をする一人として蛍都さんを応援します!それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
蛍都:隆勝丸アンバサダーとして隆勝丸ホタテの魅力をお伝えしたいです。隆勝丸ホタテはあえて過酷な環境で育てていることから、貝柱が厚くさらに甘味を感じられるのが魅力です。
また、ホタテには「順風満帆」という意味が込められています。大切な方の門出を祝う時や、受験生など今何かに打ち込んでいる方にぴったりな贈り物です!この春、ぜひあなたの大切な方と一緒に隆勝丸ホタテを味わっていただけたら嬉しいです!
結び-Ending-
挑戦することの楽しさ。
それは何かに挑戦し、自分の新たな可能性に気づいた時に味わえる感情です。
新たなことに挑戦することはもちろん不安がつきものですが、不安を乗り切ったその先にはきっと自分の道が切り開かれていると思います。
蛍都さんは高校生の時のボランティアをきっかけに自分なりのカタチで地域応援を継続しています。
私自身も、同世代の方が自分の知らない世界で頑張っていることに深く心を動かされましたし、私も様々なことにチャレンジしていきたいと思いました。
蛍都さんの後に続く皆さんも今ある地域ボランティア・活動だけではなく、自分のできるカタチを作りだし、自分自身の可能性を広げていって欲しいです。
Writer:菊地 彩那(Kikuchi Ayana)
明海大学 ホスピタリティツーリズム学部在学(2021年2月現在)。 大学ではホスピタリティ業界について幅広く学んでおります。
【取材データ】
2021.02.06 オンライン
【取材協力】
・NPO法人 ETIC.(エティック)
ローカルイノベーション事業部
・株式会社 隆勝丸
取材にご協力いただきました関係各諸機関のほか、関係各位に厚く御礼申し上げます。